指導者タイプか補佐官タイプか〜知の型

自壊する帝国

自壊する帝国

ロシアについてプロフェッショナルではないけど、好きなことに深く精通するプロフェッショナルな姿勢には、とても刺激を受けた。

自己認知をふまえて自ら仕事の適正についてコメントしたところが印象に残った。

[政治向きの性格じゃないことはごく自身が一番よくわかっている。与えられた課題をこなす行政官のほうが性に会っている。」
「そうだろうか。政治家に向いていると思う。少なくともロシアでは、マサルは政治家として向いていると思う。」
「そんなことはない。人間は生まれながらに指導者となるタイプと補佐官型がいる。僕は補佐官型だ。力のある人の横にいると僕の力が発揮できる。そうでないと現実に影響を与えない空間の中で着想がただ空回りするだけだ。そっともその空回りはそれなりに面白い。より根源的なところで、知の型の問題だ。」
マサル、どういうことだ」
「知の型には二つある。一つは、新しいものを作り出す知性だ。これをもっている人はひじょうに少ない。学歴やアカデミズムでの地位とこの根源的知性は基本的に無関係だ。イエス・キリストなどは当時の知的水準で図るならば中の上くらいだろう。決して高いレベルの学識を持っていたわけではない。
しかし、聖書を読めばわかるようにイエスにはオリジナルな知を創り出す力があった。マルクスだってそうだ。一般人は何の変哲もない見える商品の分析で資本主義社会のからくりを解明した。
バルトやフロマートカだって、聖書を読み直すことで「神は神である」という単純な心理を再発見し、自分の言葉で言い表した。こういう一流の知の型が僕にはない。おそらく僕が今後百年努力してもこのような知性は身につかないだろう。(略)」